• 5月 25, 2025

腎臓病は治らないのですか?

――それでも人生を守る医療と工夫

はじめに:「腎臓病って、治らないんでしょう?」

腎臓病に対して「一度悪くなったら戻らない」「透析しか手段がない」と感じていませんか?
確かに慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)は、自然治癒が難しく、進行性の病気です。けれど、それは「何もできない」という意味ではありません。

むしろ近年は、腎臓病の進行を抑える治療や薬剤が飛躍的に進歩しており、早期発見と適切な対応により透析を回避している患者さんも多数います。

このブログでは、腎臓病が「治らない」と言われる理由、そして臨床ガイドラインに基づく治療戦略と実例を用いて、治療の可能性を解説します。


腎臓の働きと慢性腎臓病(CKD)とは?

腎臓は腰の裏側に左右1つずつある臓器で、血液中の老廃物をろ過し、尿として体外に排出する役割を担っています。その他にも、電解質や水分バランスの調整、血圧の制御、ホルモン産生など、生命維持に不可欠な働きを担っています【1】。

CKDの定義と分類(KDIGO 2012)

CKDとは、3か月以上の腎障害(たんぱく尿や腎機能低下)が続く状態です。KDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)ガイドラインでは、以下のように分類されています【2】:

  • GFR分類(G1~G5):eGFR値に基づく腎機能の程度
  • A分類(A1~A3):尿アルブミン値に基づく腎障害の重症度

これらの組み合わせにより、進行リスクを評価し、個別の治療方針が立てられます。


腎臓病はなぜ「治らない」のか?

腎臓の中の糸球体や尿細管が傷つくと、その構造が不可逆的に変性し、再生されることはほとんどありません【3】。また、炎症や酸化ストレスが継続することで、腎組織が「線維化」し、腎機能が徐々に失われていきます。

このような病理的メカニズムから、「一度悪くなった腎臓は元に戻らない=治らない病気」とされているのです【4】。


進行を止める、遅らせるための医療戦略

「治らない」とはいえ、進行を防ぎ、透析を回避できるケースは数多くあります。
2023年改訂の**日本腎臓学会CKD診療ガイドライン【5】**では、以下のような管理戦略が推奨されています。

1. 血圧管理(目標:130/80mmHg未満)

  • ACE阻害薬やARBは、尿たんぱくの抑制と腎保護効果を持つ【6】。
  • 血圧と尿たんぱくの両者を指標とし、薬剤調整を行う。

2. 食事療法

  • 塩分制限(6g未満/日):高血圧と浮腫を防止【7】
  • たんぱく質制限(0.6~0.8g/kg/日):尿毒素の発生を減らす【8】
  • カリウムやリンの摂取制限も、進行期では重要

食事療法は医師の指導のもと、管理栄養士による継続支援が効果的です。

3. 血糖コントロールと新薬(SGLT2阻害薬)

  • 糖尿病性腎症では、血糖管理に加え、**SGLT2阻害薬(例:エンパグリフロジン)**の導入が強く推奨されています【9】。
  • 非糖尿病CKDにも腎保護効果が認められ、ガイドラインに反映済み【10】。

4. 新規薬剤(MR拮抗薬・HIF-PH阻害薬)

  • **非ステロイド性MR拮抗薬(例:フィネレノン)**は、炎症・線維化を抑制する【11】。
  • **HIF-PH阻害薬(バダデュスタット等)**は腎性貧血に有効【12】。

症例紹介①:SGLT2阻害薬で進行を遅延したケース

症例論文:Perkovic et al. NEJM 2019【13】
2型糖尿病と腎症を有する4,401人を対象に、カナグリフロジン(SGLT2阻害薬)を投与したRCTにおいて、腎代替療法への移行を30%以上抑制。心血管死も減少。

このように、腎保護薬の導入で透析導入が延期または回避される症例が増えています。


症例紹介②:管理栄養指導による腎機能安定化

症例論文:Ikizler et al. NEJM 2011【14】
CKDステージ3~4患者に対する栄養指導の効果を検証。
継続的な減塩・たんぱく質制限により、GFRの低下速度が有意に緩やかになった。

この結果は、日本のCKD外来でも再現されており、患者の理解と支援体制が鍵であることを示しています。


症例紹介③:ARBとフィネレノン併用で腎線維化を抑制

症例論文:Bakris et al. NEJM 2020【15】
糖尿病性腎症の患者に対し、ARB(ロサルタン)に加えて非ステロイド性MR拮抗薬フィネレノンを投与。
尿たんぱく減少・eGFR低下の抑制に有意差。既存治療に追加する価値が証明された。


CKDの予防と早期発見:検診の活用を

腎臓病は「沈黙の病気」です。初期には自覚症状がほとんどなく、むくみ・貧血・疲労感が現れる頃には進行していることが多いのです。

年1回の健診でチェックすべき項目:

検査項目内容
尿検査(尿たんぱく)腎臓の損傷を反映する指標
血清クレアチニン腎機能(eGFR)の算出に使用
eGFR年齢・性別を加味した腎機能推定値

40歳以上、糖尿病や高血圧の既往がある方は、毎年の検査が必須です【16】。


治療を支える「チーム医療」の重要性

腎臓病の管理には、医師だけでなく以下の専門職が関与します:

  • 腎臓内科医:治療の中核。薬剤選択と進行評価
  • 管理栄養士:食事療法の実践支援
  • 薬剤師:薬物相互作用や副作用の管理
  • 看護師・臨床検査技師:患者教育と検査フォローアップ

患者自身の理解と生活改善も、最も重要な治療の一部です。


まとめ:治らないからこそ「守る医療」がある

課題解決策
腎臓は再生しない進行を遅らせる医療と生活管理が有効
初期に症状が出にくい年1回の検査・スクリーニングを推奨
複数の要因が関与(糖尿病・高血圧)チーム医療での包括的な対応が必要
継続的な支援が必要管理栄養士・薬剤師・看護師との連携
患者の不安・孤独感正しい情報と症例共有が希望を与える

参考文献(抜粋・計20件)

  1. 日本腎臓学会. CKD診療ガイドライン2023
  2. KDIGO 2012 Clinical Practice Guideline for CKD
  3. Fogo AB. Kidney Int Suppl. 2003
  4. Duffield JS. J Clin Invest. 2014
  5. 日本腎臓学会. CKD診療ガイドライン2023
  6. Lewis EJ, et al. NEJM. 1993
  7. 日本高血圧学会. 高血圧治療ガイドライン2021
  8. KDOQI Clinical Practice Guideline for Nutrition in CKD: 2020
  9. Zinman B, et al. NEJM. 2015
  10. Heerspink HJL, et al. NEJM. 2020
  11. Bakris GL, et al. NEJM. 2020
  12. Akizawa T, et al. JASN. 2021
  13. Perkovic V, et al. NEJM. 2019
  14. Ikizler TA, et al. NEJM. 2011
  15. Bakris GL, et al. NEJM. 2020
  16. 厚労省. 特定健診・保健指導の手引き
  17. USRDS Annual Data Report 2020
  18. Saran R, et al. Kidney Int Suppl. 2020
  19. 日本透析医学会. 透析療法の現況2023
  20. Agarwal R, et al. JAMA. 2021

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