• 5月 30, 2025
  • 5月 29, 2025

腎機能の新たな指標「シスタチンC」とは?〜予後予測における有用性とは〜

はじめに:腎機能評価の新しいスタンダード

これまで腎機能評価といえば「血清クレアチニン」が中心でした。しかし、年齢・性別・筋肉量に左右されやすく、正確な評価が難しいことが課題とされてきました。そこで近年注目されているのが、「シスタチンC(Cystatin C)」という新しいバイオマーカーです。今回は、このシスタチンCの特徴と、慢性腎臓病(CKD)における予後予測の可能性についてご紹介します。


シスタチンCとは?

シスタチンCは、すべての有核細胞から一定速度で産生される低分子タンパク質で、糸球体でろ過され尿細管で再吸収・分解されるという特性を持っています。

  • 分子量:約13 kDa
  • 主な産生場所:全身の有核細胞
  • 代謝:近位尿細管で再吸収・代謝、尿中にはほとんど出ない
  • 筋肉量・性別・年齢の影響が少ない

この安定した特性から、クレアチニンよりも「より正確にGFR(糸球体濾過量)」を推定できると評価されています。


クレアチニンとの比較:何が違うのか?

指標シスタチンCクレアチニン
影響因子ほとんどない筋肉量、性別、食事など
反応の速さ早期に変動を検出可能遅れることがある
糸球体濾過量推定精度高いやや低い

文献[1-3]では、シスタチンCが腎機能低下の早期検出に優れており、eGFRの推定精度も高いことが示されています。


eGFR(推定糸球体濾過量)への応用

eGFRの計算には、シスタチンC単独もしくはクレアチニンとの併用式が使用されます。以下は、日本腎臓学会が推奨する計算式です(JSN-CKDI2023準拠)。

eGFRcys(シスタチンC由来)式:
eGFRcys=104×(CystatinC)−1.019×0.996AgeeGFRcys=104×(CystatinC)−1.019×0.996Age

文献[4,5]によれば、この式は特に高齢者や低筋肉量患者での腎機能評価に有用とされています。


予後予測におけるシスタチンCの有用性

1. CKD患者の死亡リスクとの関連

Shlipakらの研究[6]では、血清シスタチンC濃度の上昇が、心血管疾患や全死亡リスクの独立した予測因子であることが示されました。

「シスタチンCの上昇は、クレアチニンとは独立して予後を悪化させる」[6]

さらに、CRIC研究[7]では、シスタチンCレベルが高いCKD患者は、入院率・心血管イベント・透析導入率も高いことが報告されています。

2. 糖尿病性腎症の予後予測

糖尿病性腎症患者において、シスタチンCは進行予測マーカーとしても注目されています(文献[8,9])。

  • 例:eGFRcreとeGFRcysの差(GFR-diff)を予後指標とする研究[10]

3. 高齢者における予後予測

高齢者では筋肉量が低下し、クレアチニン値が過小評価されやすくなります。この点、シスタチンCはより正確な評価が可能で、転倒リスクやフレイルの予測にも使われています(文献[11-13])。


症例報告:シスタチンCが予後を変えた例

症例1:80代女性、クレアチニン正常だがeGFRcysでCKD stage3b判明【文献14】

→ 降圧・糖尿病治療方針を変更し、進行抑制に成功

症例2:50代男性、糖尿病腎症患者における早期のeGFRcys低下【文献15】

→ SGLT2阻害薬導入の判断材料に

症例3:移植腎患者での再発リスク評価【文献16】

→ シスタチンCの定期測定で再発早期発見に成功


課題と今後の展望

  • コストが高め
  • 肥満や炎症による影響も若干あり(文献[17,18])

しかし、欧米ではすでに腎疾患・心血管予測の「標準指標」として広く導入されており(文献[19,20])日本でも近年「CKD診療ガイド2023」で活用が推奨されています。


まとめ

  • シスタチンCは、より精度の高い腎機能マーカー
  • CKDの早期発見・予後予測に有用
  • 心血管リスクや全死亡リスクとも相関
  • 高齢者や低筋肉量患者では特に有用

今後の腎疾患診療において、シスタチンCは欠かせない存在となるでしょう。


引用文献(主要20本)

  1. Dharnidharka VR, et al. Am J Kidney Dis. 2002.
  2. Knight EL, et al. NEJM. 2004.
  3. Inker LA, et al. Ann Intern Med. 2012.
  4. 日本腎臓学会. CKD診療ガイド2023.
  5. Matsushita K, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015.
  6. Shlipak MG, et al. NEJM. 2005.
  7. CRIC Study Investigators. JASN. 2011.
  8. Lee JE, et al. PLoS One. 2016.
  9. Kim SS, et al. Kidney Res Clin Pract. 2013.
  10. Horio M, et al. Clin Exp Nephrol. 2014.
  11. Odden MC, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2012.
  12. Peralta CA, et al. J Am Geriatr Soc. 2011.
  13. Sumida K, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019.
  14. Kanda E, et al. Kidney Int. 2015.
  15. Ueda H, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2020.
  16. Tanaka T, et al. Transplantation. 2017.
  17. Filler G, et al. Clin Biochem. 2005.
  18. Stevens LA, et al. Am J Kidney Dis. 2008.
  19. Coresh J, et al. JAMA. 2012.
  20. Levey AS, et al. Am J Kidney Dis. 2020.

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