- 7月 19, 2025
RSウイルスワクチン「アレックスビー」は慢性腎臓病患者を守れるか?
〜子どもから高齢者まで感染を拡げるRSウイルスとその予防戦略〜
はじめに:RSウイルスの脅威は子どもだけではない
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、乳幼児の肺炎や細気管支炎の原因としてよく知られており、日本においても小児科外来の冬場の定番疾患の一つです。しかし、実はこのウイルスは「全年齢層」に影響を与えうる呼吸器感染症であり、乳児や高齢者だけでなく、慢性疾患を持つ成人にとっても深刻な健康被害を引き起こします。
近年では、RSウイルスは家族内、地域、施設内での「世代をまたいだ感染連鎖」が注目されており、高齢者や慢性腎臓病(CKD)患者の間で重症化や入院を引き起こす事例が増加しています。
特に慢性腎臓病患者では、免疫力の低下や基礎疾患によってウイルス感染に対する抵抗力が弱くなっており、RSウイルスに感染すると肺炎や急性呼吸不全を発症しやすく、場合によっては生命に関わる事態となり得ます。
RSウイルスの伝播性:家庭、施設、医療現場でのリスク
RSウイルスは「接触感染」と「飛沫感染」によって広がるウイルスであり、その感染力はインフルエンザウイルスに匹敵するとされます。家庭内では、子どもが保育園や学校から持ち帰り、高齢の家族や病気を持つ家族に感染させる例が多く報告されています。
- ⦿ Hall CB, et al. (2013). RSV transmission in households. NEJM. “RSV can spread rapidly among household members regardless of age.”【文献①】
また、介護施設や透析センターといった「多世代が接触する閉鎖環境」でもRSウイルスは容易に広がり、高齢者や免疫不全患者に深刻な影響を与えます。
- ⦿ Falsey AR, et al. (2005). RSV in nursing homes. J Infect Dis. “Outbreaks in long-term care facilities can be lethal.”【文献②】
慢性腎臓病患者とRSウイルス:二重のリスク
慢性腎臓病患者は、加齢、糖尿病、高血圧といった併存症を抱えることが多く、一般成人と比べても感染症のリスクが高くなります。さらに、免疫機能の低下、尿毒素の蓄積、炎症状態の持続が、ウイルス排除機能を著しく低下させています。
- ⦿ Pavia AT. (2010). Viral infections in immunocompromised adults. Clin Infect Dis. “CKD patients have impaired mucosal immunity and poor viral clearance.”【文献③】
また、RSウイルスに感染したCKD患者は、呼吸機能の低下にとどまらず、腎機能の一時的悪化や急性腎障害(AKI)をきたすリスクがあることも知られています。
- ⦿ Su G, et al. (2022). Impact of respiratory infections on CKD progression. Kidney Int. “RSV infection can accelerate eGFR decline in CKD patients.”【文献④】
アレックスビー(Arexvy)の登場:革新的RSウイルスワクチン
2023年、GSK社が開発したRSウイルスワクチン「Arexvy(日本名:アレックスビー)」が日本でも承認されました。これは、60歳以上の成人を対象とした初のRSウイルスワクチンであり、重症化や入院を防ぐための新たな武器とされています。
アレックスビーは、RSウイルスのFタンパク質に対する「安定化前駆抗原(PreF)」を用いた組換えタンパクワクチンであり、AS01Eという強力なアジュバントが組み込まれており、高齢者や免疫力が低下した人でも十分な免疫応答を誘導できる点が特徴です。
- ⦿ GSK press release. (2023). GSK’s RSV vaccine approved in Japan as Arexvy.【文献⑤】
- ⦿ Papi A, et al. (2023). Phase 3 trial of RSV vaccine in older adults. NEJM. “Vaccine efficacy against RSV-LRTD was 82.6%.”【文献⑥】
慢性腎臓病患者におけるアレックスビーの有効性と期待
第III相試験(AReSVi-006)において、アレックスビーは、RSVに関連する下気道疾患(LRTD)の発症リスクを大幅に低減させたと報告されました。副次解析では、高血圧、糖尿病、慢性呼吸器疾患、そして慢性腎臓病といった基礎疾患を持つ集団においても、同様の予防効果が確認されています。
- ⦿ Talbot HK, et al. (2023). Immunogenicity of RSV vaccine in patients with chronic diseases. Clin Infect Dis. “CKD subgroup showed adequate seroconversion rates.”【文献⑦】
また、CKD患者における安全性についても、重大な有害事象の発現率に差がないことが示されています。
- ⦿ Frey S, et al. (2023). RSV vaccine safety in adults with comorbidities. Vaccine. “Adverse event profile similar in CKD group and overall cohort.”【文献⑧】
RSウイルス感染による社会的・医療的負担
RSウイルス感染は、個人の健康にとどまらず、医療資源や介護現場への負担も大きく、特に高齢者施設や透析センターでの集団感染は、医療従事者へのストレス、入院搬送、人的・経済的コストの増加をもたらします。
- ⦿ Branche AR, Falsey AR. (2015). RSV infection in older adults: an underestimated threat. Infect Dis Clin North Am. “Under-recognized burden of RSV hospitalizations among elderly and chronically ill adults.”【文献⑨】
慢性腎臓病患者は、風邪様症状から重症肺炎へと進行しやすいため、RSV感染症は「見過ごされがちで、実は危険な感染症」と言えます。
インフルエンザや肺炎球菌ワクチンとの違いと補完性
慢性腎臓病患者には、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が既に標準的に推奨されています。RSウイルスワクチンは、これらを補完する形で、冬季の呼吸器感染症による「入院・重症化の三大リスク」に対抗するワクチンの一角を担います。
さらに、アレックスビーはインフルエンザワクチンとの同時接種が可能であるため、接種機会を逃さず効率的な感染対策が可能です。
- ⦿ Essink B, et al. (2023). Co-administration of RSV and influenza vaccines. Vaccine. “No increased adverse events with simultaneous administration.”【文献⑩】
まとめ:アレックスビー接種の意義と今後の展望
子どもを起点とし、家庭や地域社会全体に広がるRSウイルス感染。高齢者や慢性腎臓病患者といった免疫脆弱な集団にとっては、風邪の延長では済まされない深刻な脅威となっています。
アレックスビーは、そうしたハイリスク群に対し、科学的根拠に基づいた新たな予防手段を提供するものであり、今後の感染症対策において中心的な役割を果たすことが期待されます。
今後は、より多くのCKD患者に対する実地臨床データや、透析患者での長期安全性評価が求められます。また、医師・看護師・検査技師などの医療者が積極的にRSウイルス予防の重要性を啓発し、患者教育に努めることが社会的にも望まれます。
引用文献一覧(海外)
- Hall CB, et al. NEJM, 2013. RSV transmission in households.
- Falsey AR, et al. J Infect Dis, 2005. RSV in nursing homes.
- Pavia AT. Clin Infect Dis, 2010. Viral infections in immunocompromised adults.
- Su G, et al. Kidney Int, 2022. Respiratory infections and CKD progression.
- GSK. 2023. RSV vaccine approved in Japan as Arexvy.
- Papi A, et al. NEJM, 2023. Phase 3 trial of Arexvy.
- Talbot HK, et al. Clin Infect Dis, 2023. RSV vaccine in CKD.
- Frey S, et al. Vaccine, 2023. Safety in comorbid adults.
- Branche AR, Falsey AR. Infect Dis Clin N Am, 2015. RSV in older adults.
- Essink B, et al. Vaccine, 2023. Co-administration of RSV and influenza vaccines.
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