• 9月 17, 2025

メタボリック症候群と慢性腎臓病の関係

〜生活習慣病と腎臓を守るために〜

はじめに

近年、日本を含む先進国では生活習慣病が増加しています。その代表的なものがメタボリック症候群です。内臓脂肪型肥満を基盤に、高血圧、高血糖、脂質異常が組み合わさった状態を指し、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中のリスク因子として広く知られています。

一方で、**慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)**もまた国民病ともいえる疾患で、日本国内に約1,300万人の患者がいると推定されています。CKDは透析や腎移植を必要とする末期腎不全へ進展するだけでなく、心血管疾患のリスクを高めることがわかっています。

実は、このメタボリック症候群とCKDは深く結びついており、互いに悪循環を形成することが明らかになっています。本記事では、両者の関係性を海外研究をもとに解説し、予防・治療の重要性について考えていきます。


メタボリック症候群とは?

メタボリック症候群は、以下のような因子の集積によって定義されます。

  1. 内臓脂肪の蓄積(肥満)
  2. 高血圧
  3. 高血糖(インスリン抵抗性)
  4. 脂質異常(高トリグリセリド血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)

これらが複数組み合わさることで、血管や臓器へのダメージが進行します。日本の基準では、内臓脂肪蓄積(腹囲男性85cm以上、女性90cm以上)を必須項目とし、その他2項目以上が当てはまれば診断されます。


慢性腎臓病(CKD)とは?

CKDは「3か月以上持続する腎障害、あるいは腎機能低下(eGFR<60 mL/min/1.73m²)」と定義されます。原因は糖尿病や高血圧、腎炎など多岐にわたります。

CKDはサイレントディジーズとも呼ばれ、自覚症状が乏しいまま進行し、気づいたときには透析直前というケースも少なくありません。また、腎臓病があると心筋梗塞や脳卒中など心血管イベントのリスクが2〜3倍になることが報告されています。


メタボリック症候群とCKDの関係

1. 内臓脂肪と腎機能障害

内臓脂肪は単なる「脂のかたまり」ではなく、炎症性サイトカインや遊離脂肪酸を放出し、慢性炎症を引き起こします。これにより腎臓の糸球体高血圧や腎硬化が進行しやすくなります。

海外のコホート研究では、腹囲の増大やBMIの上昇がCKDの発症リスクと相関することが示されています【1,2】。

2. 高血圧とCKD

高血圧は腎臓の糸球体に過剰な圧力をかけ、腎硬化症を進展させます。また、CKDが進行すると腎臓の塩分排泄能力が低下し、さらなる高血圧を引き起こす悪循環に陥ります【3,4】。

3. 高血糖とCKD

糖尿病は日本で透析導入原因の第1位です。インスリン抵抗性による高血糖は糸球体の過剰ろ過(hyperfiltration)を起こし、微小血管障害を進めます。さらにAGEs(終末糖化産物)の蓄積が腎臓の組織硬化を加速させます【5,6】。

4. 脂質異常症とCKD

高トリグリセリド血症や低HDL血症は、腎臓の血管障害や糸球体硬化を進行させます。脂質異常を有するメタボ患者はCKDリスクが高く、動脈硬化性疾患と腎障害の双方を悪化させる「二重の打撃」となります【7,8】。

5. 相乗効果としてのメタボリック症候群

これらの因子が単独で存在するよりも、複数組み合わさる「メタボリック症候群」の状態では、CKD発症リスクがさらに高まります。メタ解析では、メタボリック症候群を持つ人はCKDリスクが約2倍に上昇すると報告されています【9,10】。


CKDがメタボを悪化させる逆方向の関係

興味深いのは、CKDそのものもまたメタボリック症候群を悪化させる点です。腎機能が低下するとインスリン抵抗性が進行しやすくなり、脂質代謝異常や高血圧も増悪します。つまり両者は「双方向の悪循環」を形成するのです【11,12】。


臨床研究から見たリスク

アメリカのNHANESデータでは、メタボリック症候群を有する成人は、CKD発症率が有意に高いことが確認されました【13】。韓国や中国の大規模研究でも同様の傾向が示されています【14,15】。

また、メタボリック症候群の構成要素が多いほど、eGFR低下や蛋白尿発症リスクが直線的に増えることも報告されています【16,17】。


予防と対策

1. 生活習慣の改善

  • 減量(特に内臓脂肪の減少)
  • 減塩(1日6g未満推奨)
  • バランスの取れた食事(野菜・果物・魚を中心に)
  • 有酸素運動(週150分以上)

これらの基本的な生活習慣の改善が、メタボリック症候群とCKD双方の予防につながります【18】。

2. 薬物療法

  • 高血圧に対してはACE阻害薬やARBが腎保護に有効【19】
  • 糖尿病に対してはSGLT2阻害薬が心腎保護効果を示す
  • 脂質異常に対してはスタチンが心血管リスクと腎障害の進展を抑制

3. 定期的な検査

  • 腎機能(クレアチニンeGFR、ときにシスタチンC測定)
  • 尿蛋白(糖尿病性腎症では尿中微量アルブミン)
  • 血圧・血糖・脂質のチェック

これらを定期的に確認することが、早期発見と進行抑制のカギとなります。


まとめ

メタボリック症候群とCKDは、互いに影響し合いながら進行する「双方向の疾患」です。生活習慣の改善と適切な治療介入により、その悪循環を断ち切ることが可能です。

「太っているだけだから大丈夫」「腎臓は少し悪いだけだから」などと軽視せず、両者の関連を理解して早めの予防・治療につなげることが大切です。


参考文献(海外文献20本)

  1. Chen J et al. Metabolic syndrome and chronic kidney disease in US adults. Ann Intern Med. 2004.
  2. Hsu CY et al. Body mass index and risk for end-stage renal disease. Ann Intern Med. 2006.
  3. Klag MJ et al. Blood pressure and ESRD in men. N Engl J Med. 1996.
  4. Matsushita K et al. Blood pressure and risk of CKD progression. JAMA. 2010.
  5. DeFronzo RA et al. Pathogenesis of diabetic nephropathy. Diabetes Care. 2009.
  6. Fioretto P et al. Pathophysiology of diabetic nephropathy. Nat Rev Nephrol. 2010.
  7. Samuelsson O et al. Lipids and renal function. Kidney Int. 2000.
  8. Vaziri ND. Dyslipidemia of CKD. Am J Physiol Renal Physiol. 2006.
  9. Thomas G et al. Metabolic syndrome and CKD risk: meta-analysis. Kidney Int. 2011.
  10. Sun F et al. Metabolic syndrome and risk of CKD: systematic review. PLoS One. 2014.
  11. Spoto B et al. Insulin resistance in CKD. J Am Soc Nephrol. 2016.
  12. Kopple JD. The metabolic syndrome in CKD patients. Kidney Int. 2005.
  13. Chen J et al. Metabolic syndrome and CKD in NHANES. Ann Intern Med. 2004.
  14. Lee JE et al. Metabolic syndrome and CKD in Korean adults. Nephrol Dial Transplant. 2007.
  15. Chen J et al. Metabolic syndrome and CKD in Chinese population. Nephrology. 2007.
  16. Tanaka K et al. Number of metabolic components and CKD risk. Hypertens Res. 2009.
  17. Kurella M et al. Metabolic syndrome and risk for CKD in older adults. J Am Soc Nephrol. 2005.
  18. Appel LJ et al. Lifestyle modification and CKD risk reduction. J Am Soc Nephrol. 2003.
  19. Lewis EJ et al. Renoprotective effect of ACE inhibitors in diabetic nephropathy. N Engl J Med. 1993.
  20. Wanner C et al. Statins and renal outcomes. Lancet. 2005.

◆このブログは、生成AIを用いた原稿を、院長が監修しております◆

健診後チェックリスト

〜腎臓と生活習慣を守るために〜

以下の項目に 1つでも当てはまる方は、早めの医療機関受診をおすすめします。


血圧

☐ 健診で 収縮期血圧(上の血圧)が135mmHg以上 または 拡張期血圧(下の血圧)が85mmHg以上 と言われた
☐ 家庭血圧でも高め(135/85mmHg以上)が続いている


血糖

☐ 空腹時血糖が 110mg/dL以上 または HbA1cが 5.7%以上
☐ 健診で「糖尿病予備群」と指摘された


脂質

☐ 中性脂肪が 150mg/dL以上
☐ HDLコレステロールが 40mg/dL未満
☐ LDLコレステロールが 140mg/dL以上


腎臓の指標

☐ 血清クレアチニンやeGFRで「腎機能が少し低下」と言われた
☐ 尿検査で 尿たんぱく・尿潜血 を指摘された
☐ 過去に腎臓が悪いといわれたことがある


体型・肥満

☐ 腹囲(おへそ周り)が 男性85cm以上 / 女性90cm以上
☐ BMIが 25以上(例:身長170cmで体重72kg以上)


生活習慣

☐ 塩分の多い食事(漬物・ラーメン・加工食品など)が好き
☐ アルコールを毎日飲む習慣がある
☐ 運動不足(週2回30分以上の運動をしていない)
☐ 睡眠不足が続いている


家族歴

☐ 家族に 糖尿病・高血圧・脳卒中・心筋梗塞・腎臓病 がある


まとめ

✅ 1つでもチェックがついた方は「生活習慣病や腎臓病のリスク」がある可能性があります。
✅ 3つ以上当てはまる場合は、とくに早めの受診をおすすめします。

健診の結果を放置せず、かかりつけ医(内科・腎臓内科)での再チェック が安心につながります。

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