• 12月 4, 2025

12月2日(火)より「血中ウロモジュリン測定」を導入しました

― CKD患者さんだけでなく、健康管理を重視するすべての方に ―

腎臓専門クリニックとして、当院ではこれまでもクレアチニン、シスタチンC、尿検査、腎エコーなど多角的な腎評価を行ってきました。しかし、近年の研究が明らかにした事実として、腎臓の健康は糸球体だけでは語れず、「尿細管」の機能をどう評価するかが不可欠になっています。

こうした知見を踏まえ、当院では 2025年12月2日(火)より、レノプロテクト社が提供する「血中ウロモジュリン測定」を正式に導入しました。
この検査は、すでに CKD(慢性腎臓病)で通院中の方だけでなく、

  • 健診で腎機能の低下を指摘された方
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症など生活習慣病がある方
  • 家族に腎臓病の方がいるため将来が不安な方
  • 妊娠を希望される女性
  • 過去に急性腎障害(AKI)を経験した方
  • 健康寿命を延ばしたい方

など、幅広い方に大きな価値がある検査です。

本記事では、腎臓の基礎から、血中ウロモジュリンがなぜ重要なのか、どのような未来予測が可能になるのかまで、網羅的に解説します。


■ 1. 腎臓病が増え続ける日本で必要とされる「新しい腎評価」

日本のCKD患者は 約1,330万人 と推定され、超高齢社会を背景にさらに増加傾向にあります。
しかし多くの方は、腎臓が悪くなるまで ほとんど自覚症状がありません

現在の保険診療で行われる腎機能検査の多くは、

  • クレアチニン(eGFR)
  • 尿たんぱく
  • 尿アルブミン

など、糸球体(ろ過装置) の状態を中心に判断する仕組みになっています。

しかし腎臓は糸球体だけではなく、
血流調整・老廃物の再吸収・塩分調整・ホルモン産生などを担う「尿細管」が全体の大部分を占めています。

近年、腎臓学では次のような概念が注目されています。


■ 2. 「腎予備力(renal reserve)」という考え方

腎臓には、普段使われていない“余力”=腎予備力があり、
これが豊富な人ほど、腎臓のストレスから回復しやすいとされています。

しかし、従来の検査ではこの腎予備力を捉えることが難しく、
腎臓が悪化して初めて異常が表れることも多いのが現状です。

そこで注目されているのが 血中ウロモジュリンです。


■ 3. 血中ウロモジュリンとは?

ウロモジュリン(Uromodulin)は、腎臓の中でも

  • ヘンレ係蹄上行脚(Thick ascending limb)
  • 遠位尿細管の一部

でのみ産生される、世界でも希少な“腎臓特異的タンパク質”です。

レノプロテクト社は次のように説明しています。

「ウロモジュリンは、腎臓でしか作られない、きわめて臓器特異性の高い蛋白質です。しかも、腎臓の中でも『尿細管』と呼ばれる限られた部位でのみ産生されます。」

さらに、

「血中ウロモジュリン濃度は、腎臓の働きをダイレクトに反映しており、従来のクレアチニンやシスタチンCといった間接的なマーカーでは捉えきれなかった『腎臓の声』を、より直接的に“聴く”ことが可能になります。」

と記されています。

つまり血中ウロモジュリンは
“腎臓自身の元気度・回復力を映し出すシグナル” と言えます。


■ 4. 血中ウロモジュリンの数値が示す意味

レノプロテクト社が示す参考値は以下の通りです。

  • 200〜400 ng/mL:腎機能が概ね保たれている
  • 150 ng/mL 未満:CKD(eGFR < 60)を示唆
  • 30〜40 ng/mL 未満:末期腎不全(eGFR < 15)を示唆

これはすなわち、ウロモジュリンは腎臓のダメージを 早期から反映する だけでなく、重症度と直線的に相関する という特徴を持つことを意味します。


■ 5. 血中ウロモジュリンが優れている理由

以下は海外研究15本以上の知見を統合した内容です。

① CKDの早期発見に有用

血中ウロモジュリンは eGFR正常でも低値となるケースが多く、
CTや尿検査では見えない尿細管障害をつかむことができます。

② 将来の腎機能低下スピードを予測

一般住民コホートでも、血中ウロモジュリン低値群は
将来のeGFR低下率が大きいことが確認されています。

③ 心血管イベントのリスク予測

腎臓と心臓は強く関連しており、
ウロモジュリン低値は心不全・心筋梗塞・全死亡の上昇と相関します。

④ 急性腎障害(AKI)後の回復度評価

  • AKI後の腎回復がうまくいった患者 → ウロモジュリンが上昇
  • 回復が不十分 → ウロモジュリンは低値のまま

という報告があります。

⑤ 薬剤・生活習慣の効果を反映

SGLT2阻害薬、減塩、運動、体重改善など、
腎保護効果が現れるとウロモジュリンが改善する可能性があります。


■ 6. 当院での測定の流れ

血中ウロモジュリンは 採血のみで測定可能です。
尿検査とは異なり、事前準備は必要ありません。

  • CKDで通院中の方
  • 健診のクレアチニン値が気になる方
  • 生活習慣病がある方
  • 妊娠を希望する女性
  • 自分の“腎臓の体力”を知りたい方

いずれの方も対象となり、腎臓の将来リスクを立体的に評価します。


■ 7. なぜ「かかりつけ患者以外」にも価値があるのか?

● 健診異常の原因を可視化できる

健診で eGFR 60〜70 程度でも、将来悪化しやすい人と長く維持できる人がいます。
その違いを決めるのが 腎予備力であり、血中ウロモジュリンで把握できます。

● 腎臓の“体質”に近い部分までわかる

最近の研究では、ウロモジュリンの分泌量は遺伝背景の影響も受けることが分かっており、
体質としての腎の強さを評価できます。

● 妊娠・更年期に重要

腎臓の健康は妊娠高血圧症候群や胎児発育にも影響するため、
妊娠前の腎評価としても意義があります。


■ 8. 血中ウロモジュリンで分かる未来

測定することで以下が明らかになります。

  • これから腎臓が悪化しやすいか
  • 生活習慣改善や薬の効果が出ているか
  • 腎臓の回復力がどれくらいあるか
  • 糸球体検査だけでは見えない隠れたダメージがあるか
  • 心血管病のリスクが高いか

腎臓の“現在”と“未来”の両方がわかる、非常に珍しい検査です。


■ 9. 主治医が特に注目しているポイント

腎臓専門医として、私がこの検査を高く評価する理由は次の通りです。

● 糸球体と尿細管の「乖離」を示す

eGFR が保たれていても、ウロモジュリン低値の患者さんは
将来腎機能が低下しやすい可能性があります。

● 加齢とともに低下する

腎実質の萎縮による予備力の減弱を反映します。

● 多要因リスクを統合

血圧、糖尿病、動脈硬化、脱水、腎血流低下など、
腎臓にかかる複数のストレスを一つの指標として表現します。

■ 10. まとめ

血中ウロモジュリンは、腎臓が生み出す“内なる声”を可視化する革新的な検査です。
糸球体中心の従来型評価に「尿細管・腎予備力」という新しい視点を加えることで、
腎臓の未来リスクをより正確に把握できるようになりました。

当院は12月2日(火)よりこの検査を正式に導入し、
腎臓病治療・予防の質をさらに高めてまいります。

参考文献リスト

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  14. Katz DH, et al. Uromodulin, cardiovascular risk factors, and cardiovascular outcomes. Circulation: Heart Failure. 2022.
  15. Usui R, et al. Uromodulin as an early biomarker of tubular health and renal reserve. Kidney International Reports. 2024.

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