多発性囊胞腎

多発性囊胞腎

多発性囊胞腎(たはつせいのうほうじん)は、嚢胞性腎疾患に含まれ、腎臓内に多数の小さな嚢胞が長期間にわたって形成される疾患です。
嚢胞とは体内の組織や臓器内にできる液体で満たされた小さな袋状の塊です。
嚢胞自体はがんではありませんが、大きくなると周囲の組織や臓器に圧迫をかけたり、痛みや不快感を引き起こすことがあります。

腎臓内科では頻度が高く、難病指定されている常染色体優性多発性囊胞腎(ADPKD)が主な対象疾患で、4,000人から7,000人に1人の割合とされています。遺伝性疾患ですが、嚢胞性腎疾患に対する遺伝子診断は保険収載されていないため、家族歴と画像診断(超音波検査、CT、MRI)を組み合わせています。

当院でも画像診断のため、協力医療機関でのCT、MRI撮影を依頼することがあります。

ADPKDは成人時期に診断されていることが多いのですが、加齢とともに残された腎機能が乏しくなり、中高年時になって透析導入に至る場合があります。また脳動脈瘤の合併リスクが高いことも知られており、くも膜下出血を予防するために、無症状であっても頭部MRI/MRAによる定期検査が必要です。

腰痛のシニア男性

多発性囊胞腎の症状

  • 腎臓全体の拡大や多数の嚢胞による圧迫により、腰部に痛みを感じることがあります。
  • 嚢胞の突然の破裂や出血により、急な血尿や腰痛が現れることがあります。
  • 多発性囊胞腎は、血液中の浸透圧を調節する腎臓機能に影響を与える(残された正常構造を圧迫してしまう)ため、コントロールの難しい高血圧を引き起こすことがあります。

多発性囊胞腎の治療・検査

現時点では、多発性囊胞腎の完治を保証する特効薬は存在しませんが、サムスカ(一般名 トルバプタン)による囊胞増大抑制が証明され、保険適用となっています。大塚製薬の「ADPKD.JP」には、多くの情報が掲載されています。

 参考:堀江重郎先生「多発性囊胞腎-治療の新たな展開」日腎会誌 2015;57(1):254‒261. 

なお、以下の治療法が一般的に使用されます。

  1. 管理的治療
    特に軽度の症状がある場合、腎臓の機能をサポートするために適切な薬物療法や食事療法が行われます。
  2. 血圧管理
    多発性囊胞腎によって高血圧が引き起こされた場合、降圧薬が処方されることがあります。
  3. 合併症の管理
    腎臓機能の低下や尿路感染症などの合併症が生じた場合、それらの症状に対する適切な治療が行われます。
  4. 透析や腎移植
    進行した多発性囊胞腎の場合、腎臓機能の代替手段として透析療法や腎移植が必要になることがあります。
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