糖尿病

糖尿病は、体を動かすエネルギー源であるブドウ糖を細胞がうまく取り込めなくなってしまい、ブドウ糖が血液中にダブついてしまう病気です。健康な人の場合、インスリンがしっかり働くので、血中のブドウ糖を細胞に送り込んでエネルギー源にしたり、脂肪やグリコーゲンといった物質に変えて筋肉や肝臓内に蓄えたりすることができます。糖尿病を発症すると、インスリンの分泌が不足したり、うまく細胞に作用しなくなる状態に陥ってしまいます。そのため、血糖コントロールが非常に困難になってしまい、糖尿病を起因とする合併症を引き起こしやすくなります。

糖尿病の種類

糖尿病のなかには、1型糖尿病や2型糖尿病などの種類があります。このうち1型糖尿病は、血糖値を下げる働きをしている体内ホルモンの一種であるインスリンを産生する膵臓のβ細胞がある時から壊れていき、インスリンがほとんど分泌されなくなります。これに伴い、喉の渇き、多飲、多尿などの症状が出現します。若年層に発症が多いのが特徴です。

2型糖尿病は、生活習慣による影響が強いといわれており、日本における糖尿病患者さんの90%以上を占めています。加齢や遺伝的要因のほか、食べ過ぎ、過度の飲酒、喫煙、運動不足、肥満などが原因で発症します。

糖尿病合併症

糖尿病は自覚症状が少ないため、病状を進行させやすいという特徴があります。そのため、医療機関を受診せずに放置してしまい、様々な合併症を引き起こすことがあります。とくに、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病性腎症は「糖尿病の三大合併症」とも呼ばれています。

このうち糖尿病網膜症は、高血糖状態が持続することで細小血管障害が引き起こされます。主に網膜の血管が詰まるなどして損傷し、さらに脆弱な新生血管などの発生によって、網膜内に血液成分が漏れ出します。それでも黄斑部と呼ばれる網膜の中心までに病変が達しない限り自覚症状は出にくいと言われていますが、ある程度進行すると、かすみ目、飛蚊症、視力低下、視野障害などがみられます。さらに放置が続けば失明することもあります。眼科への定期通院が必要です。

糖尿病神経障害は、糖尿病の発症によって毛細血管などが損傷を受けてしまい、それによって神経細胞も障害を受けるようになる合併症です。全身の様々な神経に影響が出てしまい、立ちくらみ、下痢、便秘、排尿障害、発汗の異常、勃起障害、顔面麻痺、しびれ、冷えなどの症状が起こります。

糖尿病性腎症

腎臓内科では、とくに細血管障害の遷延による糖尿病性腎症の合併が重要となります。これは糖毒性と呼ばれる、血管壁への障害が長年続くためで、腎臓にある非常に細い動脈が詰まってしまうことが原因です。

血糖管理の改善は腎機能の保持につながりますが、悪化すると腎機能は短期間で悪化してしまい、ネフローゼ症候群(大量の持続性蛋白尿と、低蛋白血症)を引き起こします。当院の院長は、これまでも多くの糖尿病性腎症によるネフローゼ症候群を治療してきましたが、体液量の極端な増加によって、内服の利尿薬だけでは浮腫を抑制できず、静脈注射を繰り返す場合もあります。

短期間で急激なネフローゼ症候群を起こした場合は、胸腹水の増加で呼吸困難を合併してしまい、血液から直接的に水分を除去するECUM(イーカム:限外濾過)を行わざるをえないこともあります。さらに、腎機能が悪化していれば、血液透析も実施して、体液過剰と恒常性の是正を図る必要が生じます。糖尿病を治療中で、すでに微量アルブミン尿が陽性であったり、顕性蛋白尿と指摘されている場合は、くれぐれも体調変化にご注意ください。

糖尿病の治療

1型糖尿病の治療では、インスリンがほとんど分泌されないため、自己注射によってインスリンを適切に補充します。並行して食事管理も厳密に行う必要がありますが、インスリンの補充によって血糖値をコントロールしていくことにより、発症前と同様の生活を送ることができます。

2型糖尿病では、まず食事療法や運動療法を行います。食事療法では、糖質の過剰摂取に注意し、血糖値を上げやすい夜遅くの食事は控えるようにします。乱れた食生活はインスリン抵抗性をもたらすとされる内臓脂肪型肥満を引き起こしますので、バランスの取れた食事を規則正しく摂っていくことが重要です。また、お酒は飲み過ぎない、タバコを吸われる方は禁煙する、睡眠をしっかりとって規則正しい生活をするということも大切です。

また、血糖値を下げるためには運動療法も必要です。有酸素運動によってエネルギーを消費することはブドウ糖や遊離脂肪酸の消費につながります。ジョギングやスイミングなどの有酸素運動を毎日30分程度は行うようにしてください。

こうした生活習慣の改善だけでは血糖値のコントロールが難しい場合や、合併症発症のリスクが高い患者さんには、薬物治療も行います。使用する薬としては、インスリンの分泌を促進したり働きを高めたりするもの、糖の吸収を遅らせるもの、血液中の糖を尿として排泄させるものなどがあります。これらの薬でも効果が上がらない場合は、1型糖尿病と同様にインスリン自己注射を行うことになります。